Windowsのイベントビューア(システムログ)に、ソース「Schannel」、イベントID「36887」のエラーが記録されることがあります。このログは、TLS/SSLによる暗号化通信の過程で「致命的なアラート(Fatal Alert)」が発生したことを示しています。
このイベントは発生した事象を記録するもので、単独では原因を断定できません。前後のログと詳細フィールドを使う切り分けの手掛かりとして扱います。
本記事では、このイベントが発生する意味、詳細タブに記録されるアラート番号(AlertDesc)の読み方、そして安全に原因を特定するための切り分け手順を解説します。
イベントID 36887(Schannel)の意味と発生理由
イベントID 36887は、WindowsのセキュリティパッケージであるSchannel(Secure Channel)が、TLS/SSLハンドシェイク(暗号化通信の確立交渉)において致命的なエラーを検知、または相手方から受信した際に記録するログです。
- ログの名前: システム(System)
- ソース: Schannel
- イベントID: 36887
- タスクのカテゴリ: なし
- レベル: エラー
ログ単体でPCの故障とは断定できない
このイベントは、PC本体やハードウェアの物理的な故障を示すものではありません。多くの場合、Webサイトへのアクセス、アプリの通信、バックグラウンドでのアップデート処理などにおいて、「暗号化プロトコルのバージョン(TLS 1.2や1.3など)が合わない」「証明書が信頼できない」「暗号スイートが一致しない」といった通信上の不一致が発生したことを意味します。
そのため、エラーが記録されたからといって、すぐにシステムが壊れていると判断せず、まずはどの通信で、どのようなエラーが起きているかを切り分けることが重要です。
イベント詳細(AlertDesc)の読み方とログの見分け方
イベントID 36887の原因を特定する鍵は、イベントビューアの「全般」タブまたは「詳細」タブ(XML表示)に記録されている「AlertDesc(アラート記述子)」の値です。
該当ログの見分け方
イベントの「全般」説明欄には、以下のようなメッセージが記録されます。
次の致命的なアラートを受信しました: [番号]。
(英語環境の場合:The following fatal alert was received: [番号].)
この「[番号]」の部分(XMLビューでは <Data Name="AlertDesc">[番号]</Data>)が、エラーの具体的な理由を示しています。
代表的なAlertDesc(アラート番号)の意味
Microsoftの公式資料に定義されている代表的なアラート番号は以下の通りです。
| アラート番号(AlertDesc) | 意味(英語名) | 主な原因と状態 |
|---|---|---|
| 40 | handshake_failure | 送信側と受信側で、互いに受け入れ可能なセキュリティパラメータを交渉できなかった。 |
| 42 | bad_certificate | 受信した証明書が破損している、または署名を確認できない。 |
| 48 | unknown_ca | 信頼できない認証機関(CA)によって署名された証明書である。 |
| 70 | protocol_version | クライアントがサポートしようとしたプロトコルバージョンが、サーバー側で拒否された。 |
原因切り分け表
発生している状況に応じて、確認すべき箇所と次の行動を整理します。
| 症状 | 確認箇所 | 判断材料 | 次の行動 |
|---|---|---|---|
| 特定のWebサイトやアプリで記録される | 発生時刻とアプリの通信タイミング | アプリ操作とログ時刻の一致 | アプリやブラウザの更新状況を確認する |
| システム起動・終了時に記録される | 前後のシステムログ | 特定のサービスやセキュリティソフトの干渉 | セキュリティソフトの機能を一時的に確認する |
| AlertDescが「40」で通信が遮断される | クライアントとサーバーのTLS設定 | 必要なTLSバージョン(1.2/1.3)の有効化状況 | インターネットオプションの設定を確認する |
安全な切り分け手順
設定を不用意に変更する前に、以下の手順で状況を確認してください。
ステップ1:イベントビューアでAlertDescを確認する
- スタートボタンを右クリックし、「イベントビューア」を開きます。
- 「Windows ログ」 > 「システム」を選択します。
- ソースが「Schannel」、イベントIDが「36887」のログを探してダブルクリックします。
- 「詳細」タブのXML表示で
AlertDescの数値を確認します。
ステップ2:インターネットオプションのTLS設定を確認する
- スタートメニューの検索バーに「インターネットオプション」と入力して開きます。
- 「詳細設定」タブを選択します。
- リストを下にスクロールし、「TLS 1.2 の使用」および「TLS 1.3 の使用」にチェックが入っているか確認します。
ステップ3:システムファイルの整合性を確認する(SFCスキャン)
システムファイルの一部が破損していることが原因で、Schannelの処理に異常が生じるケースがあります。
SFCスキャンの実行方法
- 目的: Windowsシステムファイルの破損を検出し、修復を試みる。
- 権限: 管理者権限が必要です。
- スタートボタンの検索バーに「cmd」と入力します。
- 「管理者として実行」をクリックします。
- 以下のコマンドを入力し、Enterキーを押します。
sfc /scannow
- スキャン完了後、結果を確認します。「整合性違反を検出しませんでした」と表示されればシステムファイルに異常はありません。
やってはいけない対処と専門家への相談基準
やってはいけないこと
- レジストリの無闇な変更: ネット上の情報をもとに、レジストリを手動で編集して特定のプロトコルを強制的に削除・追加することは避けてください。OS全体の通信が不能になるリスクがあります。
- 信頼性の低い「エラー修復ツール」の導入: 「ワンクリックで解決する」と謳うサードパーティ製のユーティリティソフトは、不要なソフトである可能性があるため導入を控えてください。
専門業者やメーカーへ相談する基準
- Schannelのエラーと同時に、PCが突然シャットダウンする、ブルースクリーンが頻発する、または「カチカチ」といった異音がハードディスクから聞こえる場合は、物理的なハードウェア障害の可能性があります。重要なデータのバックアップを確保した上で、それ以上の操作を控え、専門業者へ相談してください。
よくある質問
Q1. Event ID 36887が毎日大量に記録されます。PCが壊れる前兆ですか?
A1. これだけでPCが物理的に壊れる前兆とは言えません。特定のWebサイトへのアクセス時や、バックグラウンドアプリが外部サーバーと通信を試みて失敗した際にその都度記録されます。実害がない場合は、一時的な通信エラーとして静観して問題ありません。
Q2. AlertDescが「40」の場合、どうすれば直りますか?
A2. 通信相手と自分のPCの間で、共通して使える暗号化方式がない状態です。まずは、お使いのブラウザやアプリが最新バージョンにアップデートされているか確認してください。
Q3. Windows 11でもこのイベントは発生しますか?
A3. はい、発生します。SchannelはWindowsの基盤となるセキュリティコンポーネントであるため、Windows 10や11など、OSを問わずTLS通信の不一致が発生した際に記録されます。
Q4. セキュリティソフトが原因でこのエラーが出ることはありますか?
A4. はい、考えられます。セキュリティソフトのHTTPSスキャン機能が証明書の検証においてSchannelと競合し、エラーを誘発することがあります。
参考情報
- Schannel error codes (Microsoft Learn)
- Event ID 36887 (Microsoft Q&A)
- Windows 7 Pro x64 Schannel error 36887 complications (Microsoft Q&A)
まとめ
SchannelのイベントID 36887が発生した際は、まず「AlertDesc」の数値を確認し、通信相手とのプロトコル不一致がないかを確認しましょう。エラーログ単体に惑わされず、どの通信がトリガーになっているかを特定することが解決への近道です。